20世紀の幽霊たち  ジョー・ヒル

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ブラム・ストーカー賞を始め、数々の賞を取った幻想的な短編集です。原作は何種類かあり、日本版はすべてのボーナス作品を収録した決定版だそうです。そのため約700ページ(16作品+α)と厚く、内容も充実しています。
印象に残った作品を挙げてみます。

・二十世紀の幽霊
映画への愛情が感じられる一品です。スティーヴン・グリーンバーグって、言わずと知れたあの監督さんですねw俳優は実名で出てきますが…。
上映されてたのはたぶんディズニーの「ファンタジア」かな?「オズの魔法使」見てたらラストの意味がもっとよく分かるのに…。

・ポップ・アート
生きた風船人形と少年の友情物語。これいいです!風船ならではの設定が生きてますね。ラストの台詞も決まってます。

アブラハムの息子たち
ヴァン・ヘルシング教授もただの偏屈な親父でしかない、という話。幕切れの仕方がうまいですね。

・黒電話
少年監禁事件を扱ったスリリングな話。本の最後に削除された部分が載ってますが、これは削除で正解だと思います。

・マント
夢のような品物を手に入れて、そのマントの使い方は…。意外な展開で驚きました。

・末期の吐息
これも発想の妙が光る作品です。「サイレンスの博物館」という言葉を最初に思いついて、そこからイメージが広がったんじゃないかという気がしました。

・ボビー・コンロイ、死者の国より帰る
体裁こそゾンビ映画の撮影ですが、これはホラーでも幻想でもなく、自己実現についての話です。でもこういうのもいいですね。実在の映画と監督が出てきます。

・自発的入院
弟が作り上げるダンボールの迷路はいったいどこに続いているのか…。
途中に出てくる箱の話は、「星の王子さま」を思い出させます。
一つ一つのエピソードの絡ませ方に感心しました。

いまやかなり有名になった、スティーヴン・キングの息子さんです。キングとは少し趣が違い、ホラーというよりは幻想文学です。
キングが、他の人なら陳腐になるかもしれないモチーフを、圧倒的なディテールとストーリーテリングで書き上げるのに対し、ヒルは発想自体に人にないユニークさが感じられます。「ポップ・アート」には特に参りましたm(_ _)m
どの作品もはずれがないので、やはりすごい作家さんなんだと思います。血は争えないですね~。