兇人邸の殺人 今村昌弘

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剣崎比留子と葉村譲のシリーズ三作目。

これは面白かった!一作目の屍人荘に匹敵する意外な展開でした。

 

今までの事件の背景で糸を引いていた班目機関が過去に行っていた研究を知った二人と、研究資料と研究成果を手に入れたい成島、彼に雇われた傭兵たちは兇人邸と呼ばれる館を訪れます。しかし、驚異的な力を持つ謎の巨人の存在のために脱出できなくなります。そのうちに殺人事件が…。巨人に殺されたのか、それとも仲間の誰かに?

 

このシリーズはクローズドサークルの舞台がお約束ですが、今回もあり得ない設定自体がクローズドサークルとトリックに生かされている発想に驚かされます。

最初に兇人邸の見取り図が載っているけれど、方向音痴の私にはトリックと密接に関係する見取り図をうまくイメージする事ができず、そこは苦労しました^^;

見取り図を別の用紙に印刷してすぐ見られるようにするのが自分にはベストかも。

 

過去の研究施設の様子が挟み込まれるので、現在の登場人物に紛れ込んでいる施設の「生き残り」の正体、及び巨人の正体を推理しましたが全く違ってました。そんなに簡単に分かるようにはなっていないな、と思ったけれど、後で登場人物紹介を読み返して、注意深い人ならここで気づく人もいるかもしれない、と。

名前には他にもひっかけの要素があり、このせいで誤導される人も多いのでは。

陽光の下に出られない巨人の弱点や、首を切って運ぶという習慣を最大限に利用したトリックや脱出方法には驚きの連続でした。

「生き残り」や巨人にまつわるストーリーは切なく悲しいものになっていて、その思いが事件そのものやトリックにまで関わってくるのは読み応えがありました。

 

比留子と葉村の関係にも胸打たれます。葉村の命を何よりも大切に思う比留子は自分の事を顧みず彼を助けようとするし、葉村も同様です。ワトソンとして本当に彼女の役に立っているのか苦悩する彼。でも、最後に比留子に告げた言葉が力強く、これからも頼りになるワトソンでいてくれるだろうと思いました。

ぜひこれからも読んでいきたいシリーズです。本作は映像化向きだと思うので、映画化希望です。