N 道尾秀介
タイトルを見て、すぐに連想したのがドラマ「Nのために」でも本作のNは頭文字ではなくて、自然数の「n」Nの数だけ人生がある、という意味だそうです。
連作短編6作の冒頭1ページだけを巻頭に載せ、どれから読んでも良いという作者のナビがあります。
私は電子書籍だったけど、紙の本は作ごとに天地を逆にしているらしいです。凝った体裁の本だけど、物語はそれほど奇をてらったストーリーではないです。でも、他の短編で共通の登場人物の思わぬ秘密や謎が分かるなど、伊坂さんを彷彿とさせるような構成になっています。
私は「笑わない少女の死」「名のない毒液と花」「飛べない雄蜂の嘘」「眠らない刑事と犬」「落ちない魔球と鳥」「消えない硝子の星」の順に読みました。
後味の悪い話もあるけど、ペット探偵江添はなかなか印象的なキャラだったので、シリーズ物になると面白そうです。
確かにどれから読んでも良いと思うけど、吉岡と犬のくだりについては、先に事故のシーンを読んでいた方が良いと思ったし、「消えない硝子の星」のラストシーンの美しさは、本の最後を締めくくるのにぴったりだと感じました。
伊坂さんのような構成と書いたけれど、光や蝶、鳥など道尾さんらしいモチーフが散りばめられ、ファンも納得のできだと思います。