わが愛しのホームズ  ローズ・ピアシー

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先頃復刊したホームズのパスティーシュです。ツイ友さんの中で話題になっていたので読んでみました。

 始めは長編なのかと思ってましたが、「極秘調査」と「最後の事件」の中編二編でした。「極秘調査」は、ある女性からの、いなくなった同居人を探す依頼を調査する物語です。「四つの署名」の登場人物についてのサイドストーリーを元にしています。
 「最後の事件」はもちろんライヘンバッハです。

 翻訳者の方の力もあると思いますが、原典の文体と雰囲気をとてもよく表現した作品だと思います。やや固い感じがするのもかえってそれらしいですね。情景描写も美しいです。

このパスティーシュの最大の特徴は、ホームズとワトソンの間の恋愛感情です。BBCのドラマ「SHERLOCK」でも微妙に匂わせてる感じがありますが、周囲の理解?(笑)もあって、始めはどちらかというと笑い話になってました。シーズンが進むにつれて悲愴な方向へ進んでますが…。
でも、本作では、そういう感情は犯罪という時代です。ワトソンの秘めた思いと苦悩、二人のまとう罪悪感…心情面を深く掘り下げているのが良かったです。
ライヘンバッハ後のワトソンの痛々しさはドラマ以上で、読んでいて切なくなりました。

ワトソンが後半自分の思いをさらけ出してしまうのに対して、ホームズはライヘンバッハ前はほとんど感情に出さず、薬に逃げるという感じで、原典やドラマのホームズよりかたくなに感じます。
でも再会後は少しずつ思いを表すようになって、二人の雰囲気に温かい気持ちになります。

ワトソンの妻、メアリの扱いですが、なるほど、そういう設定にしてしまえば、傷つくことはありませんね。お互いを大切に思う関係だったことにホッとしました。

 二人の思いを中心に進むので(特に「最後の事件」)、行き過ぎた表現もなく、原典の良さを生かした、品の良い作品に仕上がっていると思いました。