ジョン、全裸連盟へ行く  北原尚彦

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なかなかインパクトあるタイトルですが、イギリスBBC制作のドラマ「SHERLOCK」のパスティーシュです。現代版シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトソンが、PCやスマホなど最新機器を駆使しながら事件の謎を解く、大人気のシリーズです。

まず表紙のシルエット。見ただけであの二人だって分かって嬉しくなります。そして、周囲の装飾にはカワウソとハリネズミが!これは、シャーロック役のベネディクト・カンバーバッチがカワウソ、ジョン役のマーティン・フリーマンハリネズミに似ているという周知の事実(本人達も含む)を受けたお遊びですね。ファン心をくすぐってくれるじゃないですか^^

タイトルは全て「ジョン」がついています。原典の作品が「The Adventure~」から始まっているものが多いので、それらしい雰囲気もあるし、ジョンをクローズアップしてくれる感じもして、ジョンファンも嬉しいのでは。

一話目の「ジョンの推理法修業」ですが、この原典を、小説新潮の「SHERLOCK」特集で少し前に読んだばかりでした。シャーロックがジョンの考えていることを言い当てる場面だけをクローズアップしたショートショートです。本作では、それに、二人の依頼人からの事件を絡めています。
ドラマでの「連続自殺事件」や体の一部を保存してる冷蔵庫、ゲイのカップルに間違われるレストランなど、おなじみのエピソードを取り入れながら、二人の関係性やシャーロックの見事な推理を楽しめる、オープニングにふさわしい内容になってます。
登場人物の台詞は全て、ドラマの吹替の声優さんの声に脳内変換されて聞こえてきました。
便利な頭です(笑)ベネさんの重低音大好きなのですが、吹替の三上さんの声もお気に入りです^^

その他の作品も、「赤毛連盟」「唇のねじれた男」などの原典を元に、現代でしかあり得ないトリックや捜査法を巧く取り入れています。原典とドラマへの両方の愛が感じられて、さすがシャーロキアンの北原さんです^^
「ジョン、三恐怖館へ行く」は北原さんもあとがきで書かれているように、最もミステリ的な作品だと思いました。ある日本製品を利用したトリックがユニークです。もしこれをドラマ化するならCMスポンサーは決まりですね(笑)

また、タイトルだけしか語られない、シャーロックが解決した事件の数々がありますが、その一部が出てくるのが楽しいです。
ラストの「ジョンとまだらの綱」はほとんどパロディといった趣で笑ってしまいました。
ドラマでこのエピソードについてシャーロックがちょっとだけ話した時、「それが聞きたかった!」と思っていたので、ここで読めて良かったです^^

テンポの良い皮肉な言い回し、ジョンとの掛け合いなど、ドラマのシャーロックを完全につかんだ描写には感心させられましたが、ちょっと違和感がある物も。
「ジョン、全裸連盟に行く」で、シャーロックがアイリーン・アドラーについて、
「確かに、『あの女』の裸は素晴らしかった」
と言っているのですが、シャーロックはそういう目では見ないでしょうし、芸術として鑑賞…もしてなさそうです。
もしシャーロックが言うとしたら、
「確かに、『あの女』のスリーサイズは完璧だった」
ぐらいじゃないでしょうか^^;(ドラマをご覧の方ならお分かりですよね)

「Casebook1」とあるので、これからも続くんですね!再来年のシーズン4まで、この北原さんのシリーズを読みながら待ちたいと思います。

(追記)
「本が好き」に投稿した書評を作者の北原さんが読んで下さっていることを知りました。
いろいろ偉そうなことを書いてしまってますが…^^;
1ドラマファンの感想として軽く受け流してくれることを祈ります(笑)