花の下にて春死なむ  北森鴻

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ビアバー「香菜里屋」のマスター工藤が、客にまつわる謎をその場で解き明かしていく安楽椅子探偵ものです。

評判通り、出てくる食べ物がとてもおいしそうです。「帆立の小鍋立て 」や、鯖の棒鮨をもとにした「変わり味の蒸し鮨」など、食べてみたいですね~。

マスターの工藤はヨークシャーテリアに似ていて、人当たりがよく、請われない限り自分から口を出すことはありません。ですが、客の話す内容のわずかな手がかりから、事件を推理してしまう手際が、料理の腕と同じく見事です。
近藤史恵さんのシリーズの三舟シェフより大人っぽい感じです。香菜里屋シリーズはまだこの一冊しか読んでいないのですが、工藤があまりにもできた人間という感じがしたので、これからもっと違う面も見られるのでしょうか…?

印象に残った作品について。
「花の下にて春死なむ」
タイトルは西行の有名な歌から。ひっそりと亡くなった俳人片岡草魚は、自分の身元が分かるものを一切残していませんでした。彼はなぜ故郷を捨てたのでしょうか。
思いがけず、自分のよく知っている場所が舞台でした。過去に遡り、大きな事件に関わりがあったこと、ある出来事が他の事件の解決にもつながっていることなど、構成が見事な作品でした。
気になったのは野菜の「ちしゃ」について。ちしゃは、レタスの種類全般の和名であるはずなのですが、一品種のように扱われていたこと。酢味噌和えについては間違いないですが、「道端に生えているのをつみとって…」は、一応野菜なので変かな、と^^;何十年も前には道端にも生えていたんでしょうか…。

「終の棲み家」
写真家の妻木は、多摩川の河岸に不法に住み着いている夫婦に魅力を感じ、写真を撮らせてもらいます。その一連の写真は賞をとりますが、個展のポスターはある日全て盗まれてしまいます。
妻木の行動が招く結果は明らかなところはちょっと…ですが、夫婦の心情がよく描かれているところと、茄子の芥子漬けが効果的に使われているのがいいと思いました。

「魚の交わり」
一作目の「花の下にて~」の登場人物七緒が、片岡草魚と関わりのあった人物についての謎を解き明かそうとします。過去に遡ることや、他の大きな事件との関わりが出てくるところなど、一作目と共通の部分が多いです。七緒に好意をもつ高塚の、ちょっとバタバタした事件が並行して描かれているのがご愛敬ですね^^;

一つの事件に対し、客達がああでもないこうでもないと様々な見方を話し合い、工藤がそこに遠慮がちに別の見方を提供する…というのがスタイルのようです。
あくまでもバーの中での解決なので、推量の域を出ない事件も多いです。そこが推理ゲーム的で「え、そんな結論でほんとにいいの?」と思うところもありますが、最初と最後の話がいいので全体としてまとまりがよく感じます。
一応次作も購入済みなので、ちょっと間を置いてからまた読んでみたいと思います。





香菜里屋シリーズは、ホントにいいですよね。
今年読んだ中で大ヒットでした。
確かシリーズは4冊だったはずですが、全部良かったですよ。
ぜひ、シリーズ読破してくださいね。 削除

2009/5/6(水) 午後 5:07 [ フェイフォン ] 返信する
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まとまりのある大人っぽい魅力溢れるシリーズで、私も気に入りました♪(まだこの1冊しか読んでませんけれど)
マスターの工藤が出来すぎた人柄なので、もうちょっと隙を見せてほしい気もしたり…続きの作品も楽しみですね~。 TBさせてくださーい^^ 削除

2009/5/6(水) 午後 5:55 TEA♪ 返信する
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確かに、え?結論それでいいの?とは私も何度か思いました。
でも、美しい題名とおいしそうな料理、けっこう好きなシリーズです。
こんなビアバーが近所にあったら間違いなく常連になってしまうなあ。 削除

2009/5/6(水) 午後 7:28 [ とくだ ] 返信する
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>フェイフォンさん
大人向けのシリーズという感じがしました。
まだこの作品だけでは良さがじゅうぶん分からなかったので、また読んでみますね^^ 削除

2009/5/6(水) 午後 8:07 ねこりん 返信する
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>TEA♪さん
ですよね~^^;三舟シェフはもっと可愛げがあったなあ…w
でも大人向けなので可愛げよりも人柄重視でしょうか^^;
でも、シリーズの他の作品を読んでみないと…ですね^^ 削除

2009/5/6(水) 午後 8:10 ねこりん 返信する
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>プラチナさん
みなさんの反応が早かったのを見ると、やはり人気のあるシリーズなのだなあと思いました。
タイトルは確かに美しいですよね。「桜宵」が特にいいと思います^^
感じの良いマスターにおいしい料理とお酒、私もそんなお店に行ってみたいです。 削除

2009/5/6(水) 午後 8:16 ねこりん 返信する
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北森さんの作品はどこか暗い部分が魅力的ですよね。そこが近藤さんとの大きな違いかな?その暗さの訳、これからのシリーズで解明されていきますよ(*^,^*)
TBさせてくださいね♪ 削除

2009/5/11(月) 午後 2:43 fuwachibiprin 返信する
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>ふわちびぷりんさん
確かに、影がある感じがしますね。
この本で出てきたエピソードがあとの巻につながって行くのでしょうか。読むのが楽しみになってきました^^
TBありがとうございます^^ 削除

2009/5/12(火) 午後 8:21 ねこりん 返信する