きのうの世界　　恩田陸

上司の送別会の最中に失踪した市川吾郎は、一年後ある町で死体となって発見されます。その後、市川の足跡をたどる人間が町に現れ、市川はその町で何かを調べていた事、また、特殊な能力を持った人間であったことが分かります。そして町の秘密が少しずつ明らかになっていくのですが…。

町には巨大な３本の塔があり、そのうちの１本はなぜか雷で焼けたままにされています。観光名所として大々的に宣伝されることもありません。町の象徴的な建物にも関わらず、塔の由来を詳しく知る人はほとんどいないのです。
また、町には水路が張り巡らされ、たくさんの橋が架かっています。殺人は、その中で唯一の木造の橋、水無月橋で起きました。この橋が架かる丘は、殺人が起きる前から町の人々はあまり近づかない場所でした。

双子のおばあさんが拾った地図、いつもと違う場所にあった犬の食器、駅の掲示板のメモ、「亀・糸切りバサミ・天の川」のステンドグラス、市川と同じ顔の男、焚き火の神様、赤い糸etc…。
様々な謎が章ごとに提示され、その多くが解明されないまま終盤まで進みます。閉鎖的な町と積み重なる謎がかもし出す雰囲気は何か禍々しく、横溝正史の小説に出てくる村や島の現代版といった感じがしました。あそこまでおどろおどろしくはないですが＾＾；

町についての秘密はとても大がかりなもので、それが明らかになるシーンには驚かされます。少なくとも塔の意味はここではっきりします。
しかし、その秘密の語られ方や、市川の死の真相など、あまりミステリ的ではありません。いくつかの伏線が回収されないまま終わるところも…。
町の秘密を、そこまで隠す必要があっただろうかとは思いましたが、明らかになるところで、ああ大きな一つの謎が終わった…と何だか妙に満足してしまうので、他のことはまあいいか、という感じに…＾＾；

ミステリとして読むというよりは、幻想文学として読んだ方がいいかもしれません。謎は謎として置き、雰囲気を楽しむ本なのだと思います。この独特の雰囲気に「流されるまま」に読むのが正解です。
また、最終章を読むと、今までの恩田さんの作品に似通ったものがあるなあと感じます。良くも悪くも恩田さんらしい作品だと思いました。

あっ、これは予約中です♪読了したらまた来ますね＾＾

僕はどっちかというと恩田作品に求めるものはミステリの要素よりも、幻想的はモノなので本書は期待大な感じ＾＾削除

2008/10/16(木) 午前 3:27 チルネコ返信する
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＞チルネコさん
謎が謎を呼ぶ…という感じで、読んでいるときはとても怖かったです。着地点は微妙でしたが＾＾；
カバーデザインも不思議な感じですよね…。本の雰囲気に合ってると思います。削除

2008/10/16(木) 午後 9:27 ねこりん返信する
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自分もこちらは予約中、回ってくるのにもうしばらく時間がかかりそうです。
かなり楽しみな作品、読んだらまたお邪魔しますね^^ 削除

2008/10/16(木) 午後 11:35 hayaton 返信する
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謎がたくさん残ったままでしたよね。メインの死体の謎は恩田さんには珍しくすっきり解かれましたが。それ以外の意味深な伏線の数々を誰かに（いや恩田さんに）解説して欲しいです・・・。削除

2008/10/17(金) 午前 1:20 べる返信する
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