太陽の金の林檎  レイ・ブラッドベリ

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先日届いたブラッドベリの訃報。
今まで、彼がまだ元気に執筆活動を続けているということに何だか勇気づけられていました。でもこの時が来てしまいました。

ブラッドベリを初めて知ったのは萩尾望都さんの漫画「ウは宇宙船のウ」でした。
小学生の時でしたが、その詩情と郷愁に満ちた作品世界に魅了されました。

その後実際に作品をいくつか読みましたが、まだまだ読んでいない作品も多く、昨年ようやく名作「火星年代記」を読んで彼の作品への思いを新たにしたところでした。

この「太陽の金の林檎」は「ウは~」所収の「霧笛」が元々所収されていた短編集です。(「ウは~」は、YA向けの傑作選)読んでみると、風刺の効いた作品が目立ちます。
全22編から、特に印象的な作品の感想を載せます。

「霧笛」
灯台守のジョニーはマックダンから、今晩灯台を訪れるものについての話を聞きます。そしてついに訪れたそれは…。
マックダンが話す霧笛についての作り話が詩のようです。
訪れたものの孤独と悲しみが霧笛とともに胸を打ちます。

「歩行者」
ただ外を散歩していただけの男。職務質問を受けますが…。
「人と違う」ということが非難される風潮を皮肉った作品になっています。

「ぬいとり」
刺繍をしながら何かを待っている3人の女性。その瞬間に訪れたものとは。
静かに過ぎる時間と、劇的なラストが好対照な作品です。

サウンド・オブ・サンダー
映画の原作ということですが、帯を見るとだいぶ原作とは違いそうですね^^;
タイムトラベルをしてティラノサウルスを狩るツアーに参加した男達は、思わぬアクシデントに見舞われます。
大統領選挙のエピソード、「雷のような音」の持つダブルミーニング、実に巧い構成です。

山のあなたに」
読み書きができないコーラは、いつも来る当てのない手紙を待ち続けていました。
滞在した甥のベンジーに手紙を代筆してもらい、次々にくる返事に舞い上がりますが…。
これも皮肉なラストですね。他力本願はダメだということでしょうか。

「草地」
映画の書き割りを守ろうとする男と、撤去しようとするプロデューサーのやり取りを描いています。
映画に込められた思いや夢が感じられる心温まる作品です。

「太陽の金の林檎」
太陽の火を地球に持ち帰ろうとする遠征隊の様子を描いています。
短い作品ですが、映画のワンシーンのようにインパクトがあり、長編の一部と言ってもいい気がしました。

なかなかバラエティに富んだ作品集でした。SFではない作品も多いです。
でもやはり「霧笛」「サウンド・オブ・サンダー」「太陽の金の林檎」などSF寄りの作品が強く印象に残りました。