トンデモ本?違う、SFだ!  山本弘

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「アイの物語」「神は沈黙せず」などの作品があり、トンデモ本を楽しむ「と学会」の会長でもあるSF作家山本弘さんが、SFの楽しさを語った指南書です^^
表紙がアメコミ風で、SFが持たれがちなチープなイメージを皮肉った感じなのでしょうか。

まず、まえがきとして、SFの定義について語っているのですが、「SFとは、筋の通ったバカ話である」というのが山本さんの考えだそうです。あり得ない話を、どうすればもっともらしく語れるか…ということですね。そのために新しい法則や技術や生物を考え出し、辻褄が合うように世界を構築するSF作家さんの頭脳には、もう一つ別の宇宙が入っているのではないか…という感じがしますw

古くはジュール・ヴェルヌに始まり、最近のグレッグ・イーガン谷川流まで年代別になっています。アシモフハインラインやクラークなどの超有名大御所作家よりも、どちらかというと個性的な作風の作家が取り上げられているようです。というか、単に山本さんが特に愛する作家さん、ということなのでしょうw

私の好きな作家さんもたくさん載っています^^
スタージョンスタートレックの脚本も書いていたというのは初めて知りました。作品の一つが「新トワイライトゾーン」でドラマ化されていたというのも驚きです。「不思議のひと触れ」はとてもいい短篇集でしたが、「海を失った男」も絶賛されてるので読みたいです。買うときにどっちを買おうか悩んだんですよね…。

フレドリック・ブラウンのページで「ミミズ天使」が紹介されていたのは嬉しかったです。これはすごく発想がユニークで、しかも心あたたまる作品です^^ここでは紹介されていませんでしたが、「きちがい星プラセット」も同じ理由で大好きな作品です。

ロバート・F・ヤングは「ジョナサンと宇宙クジラ」「たんぽぽ娘」で有名です。「たんぽぽ娘」は子供の頃買った文庫に入っていて、とてもすてきな作品だなあと思っていました。梶尾真治さんの「クロノス・ジョウンターの伝説」で紹介されているらしく、「復刊ドットコム」で「クロノス~で見て、読みたくなりました。」という人がたくさんいました。今度「奇想コレクション」で出るそうなので、読みたい人には朗報ですね^^
それにしても引用されていた、クジラを少女に例える発想はすごいですね…w

イーガンは「現代最高のSF作家」と山本さん大絶賛です。ヒューゴー賞ローカス賞の受賞者で、一般的にも非常に評価の高い作家さんですね。「途方もないアイディア」と「魂をガンガン殴りつけてくる感動」と書かれています。私も「祈りの海」を読んだのですが、「途方もないアイディア」を感じ取ったところで挫折してしまっています^^;今度ぜひ再読してみたいものです。

読んだことのない作家さんで読んでみたいのはロバート・J・ソウヤーです。「ターミナル・エクスペリメント」は、シミュレーションで作られた主人公の3つの人格の一つが殺人を犯すというSF&ミステリです。地球を訪れた異星人が殺人罪で起訴される「イリーガル・エイリアン」も面白そうです。

あと、海外SF名タイトルを集めた章も面白かったです。有名な「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」「たったひとつの冴えたやりかた」などの他、ユニークなタイトルがずらりと並んでいます。私が昨年読んで印象的だった作品に挙げたシェクリィの「人間の手がまだ触れない」も挙がっていました^^「『悔い改めよハーレクィン!』とチクタクマンは言った」というタイトルは聞いたことがあるなあと思ったら、私が持っていたSFアンソロジーに入っていました。未読ですが…^^;

すみずみまで、山本さんのSFへの愛が感じられる、とても楽しい本でした。SF好きの方ならきっと楽しめると思います。その上何と続編もあるみたいです。これも読みたいなあ…。