蘆屋家の崩壊  津原泰水

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いったい何年前に買ったのか忘れてしまった…というか買ったことも忘れていたのですが、ようやく日の目を見ました^^;

30才過ぎても就職せずふらふらしている主人公猿渡と、怪奇小説作家である通称「伯爵」が出会うさまざまな恐怖譚です。

「反曲隧道」
幽霊の名所だというトンネルを通ると…
よくある話ですが、猿渡と伯爵の出会いや、中古車についての話、ドキッとさせられるところもあり面白く読めます。

「蘆屋家の崩壊」
「アッシャー家の崩壊」を下敷きにしているのですが、ゴシックホラーに日本古来の話を絡めているのがユニークでした。「蘆屋家」って蘆屋道満関係だったんですね~。それでも、やっぱり内容は「アッシャー家の崩壊」でした。
2人が大の豆腐好きということから、豆腐についての蘊蓄が何ページも^^;この話の方がインパクトありますw

「猫背の女」
二十代の間に数々の不運に見舞われたという猿渡の、その不運の物語です。
う~ん…こんなことがあったらもう怖くて普通に生活していけない気がするのですが…よく立ち直れたなあと^^;男性の人は特に怖い話かもですね~。最後のあれはやっぱり女性的な行動なんでしょうか^^;

「カルキノス」
タカアシガニは水族館で何回も見ましたが、狭い水槽に巨大なカニがゆらゆらしていて、怖いような気の毒なような複雑な気持ちになりました。それにしても…この話、なんでカニなの?w 登場人物達も、なんか唖然としてましたね^^;

ケルベロス
これも「蘆屋家の崩壊」とよく似た雰囲気をもっています。ゴシック&和風ですね。
双子についての因習に支配された村で起きる事件を描いています。海外の番犬もやっぱり役に立ってくれるんでしょうか… 猿渡の悲運に胸が痛む作品です。

「埋葬虫」
虫がダメな人は読まない方が無難です。私は虫はだいじょぶですが、それでも気持ち悪いなあと…。こういう死に方だけはしたくないですね ^^;

「水牛群」
就職したものの、不当解雇されて精神を病んだ猿渡の、夢とも現実ともつかぬ物語。作者が自分を猿渡に投影して書いた作品だそうです。苦悶の中で、救いを見いだすほのかな明るさが感じられます。

非常に雰囲気のある作品集でした。津原さんはもともと少女小説家で「ブラバン」などはその路線だと思うのですが、怪奇幻想作家のイメージの方が最近は強いですね。
伯爵はとある作家さんをイメージして書かれたそうですが、伯爵は自分なりのイメージで読んだ方が楽しめると思うので、あとがきは先に読まないようにしましょうw