パラドックス13  東野圭吾

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p-13という謎の現象によって、誰もいなくなった東京に残された数人の人々。度重なる地震と大雨により、建物は倒壊し地面は陥没していきます。そんな中、協力して何とか生き延びようとする姿を描いています。

ブラックホールタイムパラドックスというSF的なガジェットを扱ってはいますが、パニック物&人間ドラマと思って読んだ方がいいように思います。
誠哉と冬樹という兄弟の刑事を中心に話は進みます。常に的確な状況判断のできる兄と、その時の感情で動いてしまうことのある弟。p-13後の世界でも、2人の考え方と行動の違いが浮き彫りにされます。誠哉の冷静な判断はみんなの支えになりますが、冬樹の無謀と見える行動が命を救うこともあります。
私は誠哉のでき過ぎた人間ぶりがちょっと苦手でした。人を統率することに慣れた人間ならではの傲慢さというか…。アダムとイブ発言はその最たるものですよね。もちろん管理官ともなれば全体を見て判断ができなくてはいけないし、そのおかげでみんな助かっているのですが…。
河瀬のキャラクターがなかなか面白いなと思いました。やくざで話し方も荒っぽいのですがp-13の資料を読み直してパラドックスの謎を解こうとしたり、英文を解読しようとするなど勉強家です(英文は結局人にやってもらいましたが^^;)何で誠哉は最後の方まで読んでなかったのかと思います。時計を集める行動も、誠哉とは別の方法で生き延びようとしていて前向きです。
それぞれの人々が抱えている事情や、崩壊した世界で価値観が変わってしまうところなどは読み応えがありました。

SFとして見ると納得いかないところも多かったです。天変地異が頻繁に起こる理由を、時間が数学的に不連続なものを排除しようとしていると説明していましたが、SFであればそのあたりもきっちり科学的な説明を考えてほしかったです。パニックシーンは迫力あって、映像向きですが…。この他にも起こるいろんな現象を「数学的に」という言葉で全て煙にまいたという気がするのですが^^;
ラストは一応パラドックス部分の辻褄は合っていたようですが、あれ、もう終わり?と思いました。その後をもっと読みたかったです。

あと、この世界には自分達だけ、みたいな雰囲気だったけれど、東京で移動できる範囲だけでこれだけ人がいるわけですから、他のとこにはもっといたんでしょうね。情報網が寸断されたという理由でこのグループ限定の話になってましたが、もっと規模を広げたらどんな話になってたのかな~と思いました。

ちょっと無理なところも目立ちましたが、最後まで引っ張られるリーダビリティはさすがです。でもやっぱり次はミステリが読みたいかな(笑)