小倉に、上川隆也さん、松たか子さん、志尊淳さん、広瀬ずずさんの4人がメインキャストの、野田秀樹さん脚本演出の「Q:A Night At The Kabuki」の舞台を見に行きました。
タイトルから分かるようにQueenの「オペラ座の夜」から取っていて、舞台の中でアルバムの全曲が使われてます
また、ロミオとジュリエットが下敷きになったストーリーですが、反目する家同士が、源平の争いに置き換えられています。
2日連続の観劇、1日目は1階前から4列目のほぼど真ん中という良い席で鑑賞する事ができました。2日目は5列目の松さん寄りですが、上川さんが正面に立たれることも時々あって、悪い席ではなかったです。
この記事はネタバレ満載なのでご注意下さい️
また、解釈は私個人のとらえ方なので、それぞれ皆さんのとらえ方もあると思います。
いきなり登場した等身大の上川さんにまず動揺今まで遥か彼方の席からしか拝見したことがなかったので
どこかに流されたと見られる平の瑯壬生(ろうみお)が、自分一人だけ赦免されずに置いてきぼりになる初めのシーンは、俊寛だな、とすぐに思いました。このシーンは実は最後の方のシーンに繋がっていて、ここからは過去のここまでのいきさつが語られます。
原作では悲劇的な死を遂げる2人が実は生きていたら、という設定です。
大人になった瑯壬生と源の愁里愛(じゅりえ)が、若い時の自分達の恋愛に介入し、2人が悲劇の道を選ばないように画策します。
笑えるシーンも多いのですが、前半が明るいだけに、後半の悲劇が際立つ気がします。
1日目に見て思ったのは、原作通り若い時に亡くなった方が2人にとっては幸せだったのではないだろうか、ということです。
2人の悲劇的な死が、両家に和平をもたらし、自分達は死後の世界で結ばれることを願ったわけで…
野田さんマジックで、大人になった2人は話したり笑い合ったりしています。
でも、2人は実際には野戦病院で一瞬再会するだけで、目を病んでいる瑯壬生は彼女の顔を見ることもできませんでした
しかも過去の過ちを修正することはできず、2人はまたしても悲劇に向かって突き進みます
戦争のあと滑野(シベリア)に送られた瑯壬生は過酷な強制労働と食料の不足のために悲惨な死を迎えます。「名前をお捨てになって」と言われた瑯壬生は、文字通り名前をなくした一兵士となって死ぬのです。瑯壬生の手紙は愁里愛に一通も届くことはありません。悲しい結末の上、平家は滅んでしまい、両家の和平も為されないままです。
でも、2度目に見て、そして後で戯曲を読んで心に残ったのは、実際に過ごした5日間と少しの時間を永遠の愛として昇華させた2人の姿です。
30年ぶりに届けられた瑯壬生からの白紙の手紙。届けた男から伝えられたのは
「私はもはやあなたを愛していない」という言葉でした。
愛でさえすり減ってしまうような、滑野での食べることしか考えられない過酷な日々。
名前をなくして死を迎えた彼の「私には名前があった」という悲痛な思い。
最初に見た時には分からなかったのだけど、凡太郎は30年経っても瓏壬生の言葉を忘れず、きちんと愁里愛に伝えていました。愁里愛は凡太郎つまり瓏壬生の言葉の通りに読み上げてたんですね。
愁里愛は、「愛していない」という瓏壬生の言葉を聞きながらも最後まで自分のことを考え、思いを伝えてくれたこと、それこそが彼の愛だと受け取ります。
彼女が最後に飛ばした真っ白い返信にも愛がこもっていたことでしょう。
すでに今は生と死に遠く分け隔てられてしまった2人だけれど、舞台上では一緒に登場していて、そのシーンは涙なしには見られません
しかも、最初のシーンと同じく「Love of My Life」が使われてて、こういうリンクが…と心憎い演出でした
時代と距離、生死をも超越して共にある2組のロミジュリが綾なす野田秀樹マジック、堪能させてもらいました。
1日目のカーテンコールで、おでこが膝に付くんじゃないかと思うほど深々と礼をする上川さんが、何度目かの登場のときに、ささやくように仰った「ありがとうございました」が、大きな声で仰るよりも、思いが凝縮しているようで、胸が締め付けられました。
前の方の席だと、こういうお姿も見ることができるのだなあと思いました。
松さんの美しいロングトーンの声に感動したし、志尊くんは若々しく元気いっぱいで、すずちゃんはあれだけ叫んでも声がよく出ていました。
上川さんは最初から最後まで声の張りも変わらずさすが舞台人だなと思わされました。
竹中直人さんは平清盛の役だったんだけど、ド派手な衣装にジョーカーメイクで真正面に立たれることが多くて目がチカチカでもインパクト大
野田秀樹さんご本人は乳母の役でしたが、どこから見てもばあやでした
あと、まさか上川さんのハカが見られるとは…舌を出した表情に笑ってしまいました。オールブラックスになり切ってましたね。ノーサイド・ゲームでラグビーにはまった自分には嬉しい演出でした。
大きな布が効果的に使われていて、ロマンティックな雰囲気を演出してて素敵でした
また、2人の間の届かなかった手紙を表す紙飛行機が、哀しく美しかったです。
そしてQueenの曲が全編を彩っている事素晴らしかったです