不祥事 池井戸潤

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東京第一銀行の事務部臨店という、支店の問題を調査し指導する部署にいる相馬健と花咲舞のコンビが、問題を痛快に解決する連作短編集です。
半沢直樹の登場する作品を読んでいないので、私にとって初の銀行物の池井戸作品です。ドラマを先に見ていたのですんなりこの世界に入れました。

舞はやり手の元花形テラー(窓口係)で、その頃の知識を生かし、相馬の助けも借りながら、歯に衣着せぬ物言いで、支店長だろうがお偉方だろうが気にせずグイグイと真実に迫って行きます。
暴走する舞に辟易している相馬は、舞のことを「狂咲」というあだ名で呼んでいるのはドラマと違うところです。しかし相馬も舞に影響され、いつの間にか協力させられているのはドラマと同じです。

このシリーズの魅力は、舞が水戸黄門のように悪事を暴き、それに関わった人間に事実を突きつけるところですが、一介の女子行員である彼女にあるのは印籠ではなく、見識と証拠です。

職場での問題に困っている人は、舞のように堂々と物が言えたら…と羨ましく思うのでは。

短編のせいか遊びが少なく、ドラマにあった相馬と舞の美味しい店巡りや、舞の家の小料理屋に集うシーンも出てこないのが残念です。

企画部調査役の児玉が主人公になっている話の「彼岸花」は他と趣の違う一編で心に残りました。相馬が出てこないためかドラマ化はされていません。舞は思わぬ所で顔を出します。
相馬は出てきてほしいけれど、こういう作品が入っていると物語に厚みが出ますね。

シリーズ続編はドラマとタイトルが同じになっているので、内容も影響されている部分もあるかも?また読んでみたいと思います。