影裏  監督 大友啓史

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印象的な映画を観たので、ひさびさに映画感想記事です。
タイトルは「影裏(えいり)」タイトルだけ見ても、不穏な雰囲気を感じるだけで内容は推察できません。
主演は綾野剛さんと松田龍平さんのW主演。

盛岡に転勤した今野(綾野さん)は、同い年の同僚日浅(松田さん)に出会います。
慣れない土地で親しく接してくれる日浅に、心を開いていく今野。
二人を親密にする物事として、日浅の趣味である釣りがあります。素人の今野に初歩から教える様子は微笑ましいです。
釣りのシーンは様々なシチュエーションで何度も出てきて、風景がとても美しく、ブラッド・ピットの映画リバーランズ・スルーイットを彷彿とさせます。

日浅はつかみどころのない人物で、突然いなくなったり現れたりして今野は振り回されます。そんな中でゲイの今野はだんだんと日浅に心惹かれ、部屋に来た日に迫ったりもするのですが、日浅にかわされます。でも日浅は帰らず他の部屋に泊まって行くので、今野を拒絶しているわけではないようです。

ここからネタバレです。

 

 

 

 

 

 

ある日釣りに出かけた2人は気まずくなりその後会わないまま東日本大震災がおきます。
被災地に出かけていた日浅は行方不明になります。
日浅を探す今野は父親と兄に会いますが、そこで日浅が経歴を詐称していたことを知り、家族も日浅のことをよく知らないことに気づきます。
2人とも捜索願を出すのは拒みますがなぜか日浅が生きていると思っていました。

喪失感に苛まれる今野は、ある日届いた日浅に頼まれた書類に彼の自筆があるのを見て涙します。
ラストシーンで新しい恋人と釣りをする今野。日浅に教えられた技術で他の人に教えられるまでになっています。

日浅の言葉「人を見る時はその裏側、影の一番濃いところを見んだよ」を体現するように、日浅の表面に見えているものでは彼を知ることはできず、彼について調べてもほの暗い秘密が何となく感じられるだけ、という不思議な映画でした。
日浅を綾野さんが演じてもハマったのではないかと感じました。
釣りのシーンの美しさが、不穏な雰囲気とバランスをとってくれていて良かったです。

中村倫也さんが今野の昔の恋人役で出演していて、性転換手術を受けた設定で女装しています。舞台で女性役で出演されていただけあって、堂に入っています。線が細い方なのでお似合いですね。