化物園 恒川光太郎

              

ケシヨウという人を襲って食べる怪物が、現代や、過去の日本や海外、異世界など様々な場所に出没し、それと戦いまたは共存する人々を描いた作品です。


初めのうちはただ恐ろしいだけだったケシヨウが、別の話では人々を支え助ける事もあります。


ある話では不幸になるばかりだった主人公も、別の話では不幸な人生を経てはいても、最終的に幸せとまでは行かなくても生き延びて自分なりの生き方を見つける事もあり、どうなるかは最後まで読んでみなくては分かりません。

 

このうち、「猫どろぼう猫」のみ「猫ミス!」で既読でした。


特に印象的だったのはラスト2編の「日陰の鳥」と「音楽の子供たち」です。


前者は、過去の遠い国で不思議な力をもつ子供たちがケシヨウに集められ、高い土地で共に暮らします。

それなりに平和に暮らしていた彼らですがそのうちに政変が起き、それぞれがある決意を迫られます。


後者は、音楽の才能を持つ子供たちが外界と完全に隔離された場所で謎の存在に音楽を聴かせる事で生活します。

「術理」と呼ばれる魔法で閉ざされた箱を少しずつ開けて行く事で新しい物を手に入れたり世界が開けて行ったりする様子は、ブラッドベリの短編(萩尾望都さんも漫画化されてた)「びっくり箱」を彷彿とさせます。


だんだんとグレードアップする異世界度が実に恒川さんらしく、初めの方の作品が「ケシヨウが出現するだけの作品」になっているのも恒川さんの仕掛けだったのだなあと思わされました。


久しぶりに読んだ恒川さんでしたが、その世界観を堪能する事ができて大満足です。