猫ミス!

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先日読んだ「dele」のタマさんがかわいいので、猫の本が読みたくなって、たまたま見つけたこの猫アンソロジーを手に取りました。ミステリなので、ただ可愛い猫を愛でるだけの話ではありません。可愛いのもあれば怖いのもあるし、切ないのもあります。

「黒猫ナイトの冒険」  新井素子
家猫をやめて野良になったナイトが、えさ場を巡って、鴉のキングと攻防を繰り広げます。なぜ自分の餌ばかり狙うのか不思議に思うナイトでしたが、キングには思惑が…。
新井さんの作品、ひさびさに読みましたが、SF系ではなく、ちょっとほっこりさせられる物語でした。

「呪い」 秋吉理香子
野良猫の餌やりや避妊手術を受けさせる「にゃんこ見守り隊」のメンバー3人は、毒の餌を食べて死んでいる猫を発見します。猫嫌いで、前から文句を言いに来ていたおじいさんが犯人ではないかとメンバーは思いますが。
誰のどういう呪いなのか、というところがポイントですね。

「春の作り方」  芹沢央
おじいちゃんが、おばあちゃんの思い出として大切にしていた、桜茶の瓶詰めを割ってしまった主人公は、内緒にして、自分で桜茶を作ってごまかすことにします。
一方で、友人の水谷くんの拾った捨て猫を、おじいちゃんに飼ってもらうことにしたのですが、猫の世話をしていたおじいちゃんの具合が悪くなって…。
なるほど~湊かなえさんのあるミステリのトリックを思い出しましたが、本作の方は切なくも心が温かくなる物語です。

「一心同体」 小松エメル
「猫になりたい」と言っていた双子の妹の葵は、本当に猫になってしまったのでしょうか。 子供がいる家の庭の崖をずっと放置しているというのが不自然でしたが、茜の心情はよく描けている作品でした。

「猫どろぼう猫」  恒川光太郎
泥棒の羽矢子は、ケシヨウと呼ばれる魔物を退治するために旅をしている老人と出会います。常軌を逸した言動をする老人と、行動を共にするはめになった羽矢子は…。
変わった話ですね-。恒川さんの異世界物の中でも、かなりオフビートな作品です。

オッドアイ」  菅野雪虫
死んだ猫を触っていたことから、「死神」とあだ名を付けられた少年と、いなくなったオッドアイの猫を探す果歩、2人の友人である主人公の3人の、猫を巡る物語です。全体の雰囲気、エピソードのリンクや印象的な言葉など、道尾さんを彷彿とさせます。

「四月のジンクス」 長岡弘樹
八十近い年で一人暮らしの主人公は、隣に住む、憎まれ口をたたき合う同年代の友人の猫を預かることになります。
年をとると「終活」が必要なんだなあ…としみじみ思わされました。若い頃から考えている人もいるようですが、何才くらいから考えるのが適当なんでしょうか。

「猫探偵事務所」 そにしけんじ
「猫ピッチャー」で有名なほのぼの系の猫マンガで有名な漫画家さんです。本作も同じく。
考えさせられる作品が多い中、最後にホッとさせられます。

気に入ったのは「春の作り方」「オッドアイ」です。ただ猫に癒やされたい…という人には向かないかも知れませんが、ミステリとしてはよくできてる作品が多かったと思います。