雲上都市の大冒険  山口芳宏

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たぶん「本の雑誌」だったと思うのですが、新作のレビューの中にこの本のタイトルが載っていて何だか面白そうだな~と思ってました。タイトルからして冒険活劇って感じがしますよね^^
最近内容が重めの本を読むことが多かったのでスカッとすることを期待して読み始めましたが、これが大当たりでした♪最初に載ってる作者の写真(和服着た石橋凌って感じ)と鮎川哲也賞受賞の言葉も期待感を高めてくれました(笑)

舞台は昭和二十七年。東北で栄えた四場浦鉱山には、雲上都市と呼ばれた鉱山労働者のための街がありました。そこで二十年間幽閉されていた男、座吾朗が姿を消します。そして次々に殺人が。復讐の鬼となった彼の犯行なのでしょうか?

探偵二人のキャラクターが最高に面白いです。数々の難事件を解決して鳴り物入りの荒城咲之助と、学生服姿で義手の真野原玄志郎です。荒城は気障で美形、いつも白スーツのいかにも探偵というキャラですが、やたらと「荒城咲之助だ!」と見得を切ります。その理由は最後の方で出てくるのですが、もう大笑いです(笑)
真野原は語り手である殿島に、わらしべ長者のように物々交換で手に入れた物の話を延々としたあげく、大きな柱時計を押しつけて行ってしまいます。義手は特別製で、用途に合わせて付け替えができ、ユニークな機能をいろいろと持っています。金魚鉢搭載義手とか(爆)また変な特技(自称)を持っていて、関東近郊の名店のいなり寿司を食べ分けることができるとか、全国で発売されている糊の種類をかぎ分けられるとか…^^;でも空間把握能力という才能は、最後に大きな役割を果たすのですが。

座吾朗は牢屋からどのようにして消えたのか、というのが最大の謎なのですが、これは「えええ!」というぶっ飛びトリックです。これはたぶん無理でしょう…^^;鶏盗難の理由も、そんなので確かめても…と思うのですが、何だか流れに乗ったまま納得させられる感じです。でもインパクトは大ですね~。想像すると怖いんですけど^^;ダイイング・メッセージの意味や、その目的は意外でなるほどと思いました。

ミステリ的には問題もあるのでしょうが、何と言っても物語として面白いです!謎の男、血で書かれたメッセージ、首なし死体、迷宮のような鉱山など、橫溝正史を彷彿とさせる要素がたくさん出てきて、ユニークなキャラ達とともに探偵小説としての面白さをこれでもかと感じさせてくれます^^非常にストーリーテラーとしての才能をお持ちの作家さんだと感じました。
欲を言えば、もっと荒城に活躍してほしかった気がします。解決部分は真野原の独壇場でしたし。ラストで、早くもシリーズ化することを明らかにしているので(選評委員の島田さんにツッコミを入れられています^^;)次回作では荒城の活躍を読めるのではないかと期待しています。「豪華客船エリス号の大冒険」は図書館で借りる予定です。楽しみです^^