貴族探偵  麻耶雄嵩

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ひさびさの麻耶さんです。でも、前に読んだのが「神様ゲーム」^^;児童書とは思えない、トラウマになりそうな黒さでした。でも、「貴族探偵」はだいぶ趣が異なっています。

今回の作品は、本格トリックにキャラのユニークさが加わって、何とも魅力的なものになっています。主人公の「貴族探偵」は、警察幹部が動くほどの、さるやんごとなき出自の若様です。出てくる女性達が、身分や財力とは関係なくなびいているのを見ると、人間的魅力があるのでしょう。
この探偵、自分では何もせず、三人の使用人を手足のように使い、その間にしているのは女性を口説くことばかりです。それでは安楽椅子探偵として、最後に推理を披露するのか…と思いきや、全員を集めての犯人の指摘も、推理の披露も、優秀な使用人たちが行ってしまいます。推理は貴族探偵が行い、それを使用人に語らせているのかとも思いましたが、使用人の推理を聞いて初めて知った、という反応をしてるので、推理も全部使用人がしているようです^^;当然、他の登場人物からは「ほんとに探偵…?」と疑問をぶつけられますが、「雑事は使用人に任せておけばいいのです」「貴族が自ら汗するような国は、傾いている証拠ですよ」とどこ吹く風です。普通なら、目立つとこだけ持って行きそうな気がしますが、そういうことに全くこだわっていないあたり、やはり貴族なんだなあ…(?)と思います^^;実際、変な人だなあと思いつつ、だんだんと惹かれてしまう自分が…(笑)題名は正確には「貴族(とその)探偵」ですね^^;
舞台は間違いなく現代なのですが、その周辺だけ妙に時代がかった貴族と使用人たちの醸し出す雰囲気も楽しいです。

特に好きな作品は「こうもり」です。これは引っかけられました~^^; ミスリードのためのアイテムの使い方の巧さが光ってます。題名も読んで納得、です。
「加速度円舞曲」の、何で石を動かしたのか、という理由もいいですね。被害者のあることが理由で、あれを動かしこれを動かし…で最後に巨大な石まで動かさないといけないとは、まさに加速度円舞曲です。
「春の声」は、ミステリではよく聞くトリックですが、横溝ぽい設定とシチュエーションの面白さが目を引きました。

う~ん、麻耶さん面白いです^^用意してある「螢」にも期待です。