カーデュラ探偵社  ジャック・リッチー

イメージ 1

短編の名手リッチーの、カーデュラシリーズを一冊にまとめたものです。
「クライム・マシン」は文庫で読んだのですが、単行本にあったこのシリーズがはずされてたのは、これだけでまとめる予定だったからなんですね。

表紙でも思いっきり分かっちゃってますが、カーデュラは伯爵家に生まれた吸血鬼です。
昼は活動できないので夜だけ探偵社を営業してます。それでも、その方が都合が良いという客が次から次へとやって来ます。

始めの一編「キッド・カーデュラ」は、カーデュラが探偵社を営業する前の物語です。
没落した家で金銭的に苦慮したカーデュラが選んだ仕事は何とボクサー!吸血鬼がボクサーですよ(笑)
超人的な力を生かして連戦連勝しますが、親戚一同に大反対されることに…。
吸血鬼ならではのエピソードが効果的に使われて、大好きな一編です。

続く7編が探偵社を開いてからの物語です。すべてミステリー短編で、トリックもなかなか読み応えがあります。特に印象に残る3編を紹介します。

「カーデュラ救助に行く」
カーデュラは、全く同じ状況で同じ女性を何度もひったくりから助けることになりますが、その理由は?
助けるたびにごみ箱を壊してしまうのですが、それが事件につながりがあるのが驚きです。

「カーデュラの逆襲」
有名な吸血鬼キラーのヴァン・ヘルシングを元にしたヴァン・イェルシングに仲間を殺されたカーデュラは、復讐を企てます。復讐の仕方にもユーモアがあって、くすっと笑える内容になってます。

「カーデュラ野球場へ行く」
野球選手のロッカールームを荒らす泥棒が殺されます。最後に口にした言葉は「NO SNOW(雪がない)」どういう意味なのでしょうか。
なるほど!と感心させられるトリックです。日本人でも勘の良い人なら分かるかも…。

カーデュラが自分でも言ってるように、「道義をわきまえた正直者」で、吸血鬼なりにルールを守って生活しているのが面白いです(笑)
吸血鬼らしい行動の数々が、犯罪解決に役立ったり、色を添えているのがこのシリーズのユニークなところです。

この後がノンシリーズの5編です。
最初の「無痛抜歯法」が歯医者の話で、カーデュラは今度は歯医者になったのかと思ってびっくりしましたが、シリーズ物じゃありませんでした^^;

それぞれ趣が違いますが、リッチーらしい洒落た犯罪物になってます。

カーデュラシリーズはもちろん、ノンシリーズも楽しめるお得な短編集だと思います。