ペンギン・ハイウェイ  森見登美彦

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アオヤマ君は、探求心旺盛で、いつもノートに調べたことを書きとめている小学4年生です。街にたくさんのペンギンが現れるという出来事は、草原で見つけた不思議な「海」と、歯科医院のお姉さんに関係があるのでしょうか?彼は調査を開始します。

ファンタジーノベル大賞はこれでとったら良かったな~と思うようなファンタジックな作品でした^^何といっても、ペンギンがかわいいのです^^ブログペットでペンギンを飼っているように、私はペンギン大好きです。あの歩き方、たまりません^^不思議で愛らしいペンギンたちが、本の中からあふれ出してきそうなのです。カバーをはずしてみると、白一色に、ぺたぺたと遠くに歩き去っていく小さなペンギンたちの姿が…かわいすぎる♪あの翼でぺちぺちされてみたい気もするんですが、きっと痛いんでしょうね^^;
ペンギン達がどこからどうやって来たのかという発想にはびっくりしました。どういう風につながったのか…森見さんの中での化学反応が不思議です。

「海」の存在がレムの「ソラリス」からというのはSF好きなら気づくと思います。アオヤマ君がスズキ君をおどかすのに使った「スタニスワフ症候群」にもにやり(笑)でも肝心な元ネタを未読だったりして…^^;この本を読んだら「ソラリス」は絶対読みたくなります。「海」のプロミネンスを始めとした現象の描写も透明感あって印象に残りました。

ペンギンを襲うジャバウォックは、「鏡の国のアリス」に出てくる怪物です。アオヤマ君達が興じるチェスもここからのアイテムですね。アリスが入っていく冒険の世界が、この物語の世界と重なります。

森見さん自身がアオヤマ君のような子供だったのでは?と感じました。大人からは、ちょっと子供らしくないけど、真面目で一生懸命なのできちんと接してあげなきゃ…と思われるような感じ^^実際、お父さんも歯科医院のお姉さんも、子供だからと言っていい加減にあしらったりせず、対等に接しています。森見さんもそういう育ち方をしたのかも知れませんね。そして○っぱいへのこだわり…4年生にしてはこだわりすぎだなあとは思いましたが^^;でも、おませではないのは間違いないですね。恋愛ごとには疎いようなので^^;
独自の研究をしているウチダ君や、「海」の研究を続けるハマモトさん、スズキ君帝国皇帝(森見さんらしい命名です^^)のスズキ君など、同級生のキャラクターとその関わりもいいなあと思いました。

夏休みのキラキラした冒険譚でもあり、SFファンタジーでもある物語のラストは、切ない初恋物語として胸に残ります。森見さんの新境地、とても気に入りました^^