プラチナデータ  東野圭吾

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DNAを登録することで、犯罪の防止や捜査に役立てるシステムが実用化されている社会。その中で、そのデータにあてはまらない連続殺人事件(NF13)が起こります。そして、システムの開発者も殺されます。警察庁特殊解析研究所でシステムを扱う神楽龍平は、開発者の服についていた毛髪が自分を指していることに気づくのですが、自分が犯人ではないと言い切れない不安を抱えていました。調査する中で浮かび上がる「モーグル」「プラチナデータ」とは…?

現代から少し科学が進んだ世界を舞台としています。清水玲子さんの漫画「秘密」を思い出しました。
DNAの登録というのは、現実からそう離れたことのように思えませんが、陶芸家の作品と寸分違わぬものを作るロボットアームが出てきて、なるほどそういう世界か、と。
浅間を中心とする警察のメンバーが、普通の現代ミステリのようにアナログな雰囲気なので、特解研周辺の人物や先進科学捜査とのギャップがあります^^;

神楽は最初つかみどころがないキャラクターという感じがしていましたが、彼の秘密が明らかになり、謎の少女スズランとの逃避行が始まってからは人間味が加わって、感情移入できるようになりました。
神楽とスズランの複雑な関係、スズランの正体のあたりはやや設定に無理があるとは思いましたが、彼女の存在は大きく、胸を打つエピソードになっていたと思います。

父親の死でシニカルになり、DNAを登録するような管理社会で人間本来の良さを見失っていた神楽が、「作品(データ)よりも、それを生み出した人間こそが貴重」だと気づくところ、これがこの物語のテーマなのだと思いました。
神楽にとって重要な人物であるリュウはいつも絵を描いていました。きっと神楽にそれを気づかせる役割を担っていたのでしょう。だからこそラストの展開だったのですね。

モーグルプラチナデータの持つ意味やそれを巡る攻防など分かりやすい展開でしたが、NF13の犯人が唐突でした^^;それまであまり表面に出てこないのに、終わりの方で再び意味ありげに出てくるので、すぐに犯人だと分かってしまいます。もう少し神楽の周辺で怪しい動きをする人物が多くいても良かったかなと思います。