エスカルゴ兄弟  津原泰水

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出版社をリストラされ、料理上手を買われて吉祥寺の立ち飲み屋に斡旋された尚登。その店の長男、秋彦は螺旋大好きな「ぐるぐる写真家」でした。秋彦は店を改装して、エスカルゴ料理店を開こうと計画していました。
その店「スパイラル」を巡る、ユニークな人々とおいしい料理いっぱいの空腹小説(byチルネコさん)です。

ひさびさに読んだ津原さんですが、今まで読んできた幽明志怪シリーズや、「綺譚集」「11」など、幻想・怪奇色の強い作品とはがらりと雰囲気が違います。さまざまなタイプの作品を書かれているということは知っていましたが、これほどユーモアたっぷりだと、同じ人が書いたとは信じられないくらいです。
でも、幽明志怪シリーズでも豆腐を始め、食へのこだわりは随所に見られていたので、やはり津原さんらしい作品と言えるでしょう。シリーズの登場人物もちらっと登場しているのは嬉しいですね。

エスカルゴ…ってカタツムリと思うとやっぱりちょっと抵抗がある人もいると思います。そういう人のためにも、エスカルゴ以外の料理、モツ煮込み、油揚げにチーズを挟んで焼いたキツネなど、おいしそうな一品料理をいくつも小出しにしてくるのがたまりません。

読んでいくうちに、本当のエスカルゴであるヘリックス・ポマティアの奥深さにだんだんと魅せられてしまいました。
エスカルゴ、むか~し食べたことあるような気がするんですけど、もしかしたらこの本でバッタもん扱いのアフリカマイマイなのかも知れません。そんなにおいしかったっていう記憶も残ってないので。
本物ってどんなのだろうな、ってすごく気になります。エスカルゴを使った様々な料理が出てきますが、メニューを試行錯誤しているうちに生み出された、伊勢うどんとコラボしたウドネスカルゴ、そのおいしさが想像できないんですが…。とりあえず一般的なメニューを食べてみたいです。でも、あとの方で出てくるエスカルゴもずくと軍艦巻きはおいしそうです。

讃岐うどん屋の息子の尚登と、伊勢うどん屋の娘でソフィー・マルソー似の桜の、ロミオとジュリエット的な恋愛ストーリーも気にかかるところです。
ラストの尚登と桜の感じじゃ、続編ありそうなんですが…。讃岐うどん伊勢うどんの対立もまだまだ続きそうですし…ぜひ続き読みたいです!