ブランケット・キャッツ  重松清

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とあるペットショップ、二泊三日、毛布付きで猫を貸し出すレンタル業も行っています。毛布は、短期間で住む家を変わる猫たちのストレスを和らげるためです。猫につき一枚のその毛布さえあれば、猫たちはどこでもすやすやと眠れます。人間にもそういうのありますよね…お気に入りの枕とか毛布とか…。私の場合はタオルで作ったぬいぐるみのクマでした。

猫を借りた人たちは、それぞれ悩みを抱えています。猫といることでただ癒されるという物語ではありません。読んでいてつらい話もありますが、最後にはわずかでも救いが見えるのが共通の連作短編集です。

特に好きだったのは「嫌われ者のブランケット・キャット」
ペット厳禁のマンションに住んでいる主人公は、恋人が子猫を拾ってきたため、内緒で自分の部屋で飼うことにします。マンションの大家は、レンタルしてきた猫を使って、無断で飼われているペットを見つけ出すのが毎月の習慣です。その猫はでっぷり太って目つきが悪く、ふてぶてしい感じのかわいいとはほど遠い猫でした。
主人公達は、その猫をレンタルして、自分の猫と慣れさせることで大家の目を免れようと計画を立てます。
フリーターで特に目的もなく日々を生きている主人公が、猫をきっかけにだんだんと生き方を見直すようになっていきます。大家との距離が縮まったあと、交わす会話にじんとさせられます。
主人公の話し方がDAIGOぽいので、ずっと彼をイメージして読んでました^^;

「身代わりのブランケット・キャット」も好きです。
認知症が進んできた祖母を施設に入れることが決まり、その前に次男の家で最後の家族団らんをすることになります。祖母がかわいがっていた猫ロンロンはすでに亡く、代わりにそっくりの猫をレンタルして来ます。
 次男の娘は結婚を前提にした彼がいますが、その前提を見失った状態です。ですが、家族に「おばあちゃんを安心させるように」言われ、彼を家に連れてくることになりますが…。
ロンロンとして完璧にふるまう猫と、完璧にはふるまえない娘。祖母を思いながら施設に入れることを思いとどまれない一家の中で、本当に幸せそうにしている祖母。それらが対照的に描かれています。
ラストの娘の決断が爽やかです。

「猫は大切なものを失ったら、困ることしかできないけど、人間は違うの。大切な物がなくなっても、それを思い出にして、また新しい大切な物を見つけることができるし、勝手に見つけちゃうものなのよ」
猫にとって、毛布をなくすこと…そんなつらい出来事があっても、それを乗り越えて生きていこうとする人々の姿を、それぞれの物語で描いているのだなあと思いました。