ラジオ・キラー  セバスチャン・フィチェック

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ラジオ局に人質をとって立てこもった犯人ヤンの要求は、交通事故で死んだはずの恋人レオニーに会わせろというものでした。犯人はリスナーの家に無作為に電話をかけ、正しい答え方をした場合には人質を一人解放、できなかったら殺すという「キャッシュ・コール」を始めます。交渉人のイーラは、娘を亡くしたつらい過去を持ち、犯人との交渉の中でその過去を明らかにすることに…。

恋人が生きていることを信じ、あらゆる手を使って行方を捜そうとしたヤンが最後にとった手が立てこもりでした。一生懸命だった気持ちは分かるけれど、黒幕やファウストが言ったように(ゲーテのじゃなく、検事の名前) もうちょっと我慢してたら普通に会えたんじゃないかと…。彼が大騒ぎしたのが原因で、黒幕もレオニーの死に疑問を抱いたのだし。結果はどうあれ、彼がしたことは犯罪だしムチャだな~と感じました^^;

イーラと娘との関係は難しいですね~。次女のキティの心境は複雑です。でもとっても自分勝手です。それで長女の死の真相がイーラに知らされることもなく、ずっとイーラは悩み続けてきたのですから。自分の罪の意識を母親に投影するというのはあることなのかもしれないけれど、イーラが気の毒すぎます。
苦しみに耐えながら犯人と対峙する姿は痛々しかったですが、芯の強さを感じさせ、かっこよかったです。

黒幕とつながっていた内部スパイについては、途中「あれ?」と意外に思ったことがあって、それがずっと引っかかっていたのですがやっぱりでしたね…。

プラチナブロンドに染めた髪、鼻ピアス、番組がうまくいかない時に台本を部屋で燃やすという放火癖をもつディーゼルのキャラが秀逸です^^すごく変な人に見えますが、一番頼りになるのがこの人です。見かけからは想像つかない繊細な優しさももっているのが意外です。

心理面の描き方にちょっと不満は残りますが、リーダビリティについては問題なしです。
作者がもともとラジオ局のディレクターということもあって、そのあたりリアルに描けてます。
前作の「治療島」よりもエンタテイメント性は高いと思います。「治療島」の方があっと驚く展開があって、印象に残りましたが。
次は「前世療法」ですね~。